十五夜お月さんばあや を雇っていたくらいだから、裕福な家庭だったのでしょう。でも、ばあや はお暇をとりました。もういません。妹は田舎にもらわれていきました。親類に預けられたというのではなく、もらわれていったのです。そして、主人公は、もういちど母さんに逢いたいと歌います。つまり家庭が崩壊してしまったのです。仲良く暮らしていた家族がバラバラになってしまったのです。一家離散です。なかなか悲惨な詞ではありませんか。
御機嫌さん
婆やは お暇(いとま) とりました十五夜お月さん
妹は
田舎へ 貰(も)られて ゆきました十五夜お月さん
母(かか)さんに
も一度 わたしは 逢いたいな。
いったいこの家庭に何があったのでしょうか。どんな不幸が襲ったのでしょうか。主人公は、今どこにいるのでしょうか。小さな妹は田舎にもらわれましたが、この女の子は、どこにもらわれたのでしょうか。遊郭に売られていったのでしょうか。父親はどうしたのでしょうか。自殺したのかも知れません。想像するだに悲惨な情景が目に浮かんできます。
子どものころには、こんなこと考えもしなかったのですが、こうして読み返してみると、短い詩でありながら、人生の悲哀が重く歌い込まれています。「今では青い目になっちゃって...」 という「赤い靴」もそうですが、野口雨情さんの詞には、何かおそろしいものを感じますね。
データでは、ハーモニックスを使ってしまいました。SC-88/88Pro 以外の機種では変な音になるかも知れません。ごめんちょうだい。